平成17年1月第5週(〜1月30日)
「愛するということ」、エーリッヒ・フロム著、鈴木晶訳
紀伊国屋書店、¥1,262(税抜)

 @著者エーリッヒ・フロムは、新フロイト派の精神分析家で、フロイトの心理学に、マル
 クスやマックス・ウェーバーの理論を組み合わせ、社会心理学を生み出した人です。
  その著書「正気の社会」等も面白かったのですが(そのうち掲載します)、当該「愛する
 ということ」では愛を技術であると分析している視点が興味深いところでしょうか。もちろ
 ん、ノウハウ本のたぐいではないため、その技術を習得し生かすためには、高い精神
 レベルが必要なことは、読めばわかりますが・・・。
  「共棲的結合とはおよそ対照的に、成熟した愛は、自分の全体性と個性を保ったまま
 での結合である。愛は、人間のなかにある能動的な力である。人をほかの人びとから
 隔てている壁をぶち破る力であり、人と人とを結びつける力である。愛によって、人は孤独
 感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、自分の全体性を失わない。
 愛においては、二人が一人になり、しかも二人でありつづけるという、パラドックスが
 起きる。」
  「生産的な性格の人にとっては、与えることは全くちがった意味をもつ。与えることは、
 自分のもてる力のもっとも高度な表現なのである。与えるというまさにその行為を通じて、
 私は自分の力、富、権力を実感する。この生命力と権力の高まりに、私は喜びをおぼえる。
 私は、自分が生命力にあふれ、惜しみなく消費し、いきいきとしているのを実感し、それゆえ
 に喜びをおぼえる。与えることはもらうよりも喜ばしい。それは剥ぎ取られるからではなく、
 与えるという行為が自分の生命力の表現だからである。」
  「人間を人間とみなし、世界にたいする人間の関係を人間的な関係とみなせば、愛は愛と
 だけ、信頼は信頼とだけしか交換できない。その他も同様である。芸術を楽しみたければ、
 芸術の修行を積んだ人間でなければならない。人びとに影響をおよぼしたいと思うなら、
 実際に他の人びとをほんとうに刺激し、影響をあたえられるような人物でなければならない。
 人間や自然にたいする君の関わり方はすべて、自分の意志の対象にふさわしいような、
 君の現実の、個人としての生の明確な表出でなければならない。もし人を愛してもその人
 の心に愛が生まれてなかったとしたら、つまり、自分の愛が愛を生まないようなものだった
 ら、また、愛する者としての生の表出によっても、愛される人間になれなかったとしたら、
 その愛は無力であり不幸である。」
  う〜ん、深い・・・。 
平成17年1月第4週(〜1月23日)
「葉隠」上・中・下、山本常朝(田代陣基著)、和辻哲郎・古川哲史校訂
岩波文庫、上・中・下合計¥1,620(税抜)

 @戦国時代(慶長年間)の鍋島藩祖鍋島直茂から数えて3〜4代の間の、鍋島藩記的
 な意味合いの強い書物です。
  が、ある意味哲学書と取れないこともありません。かの有名な、「武士道とは死ぬこと
 と見つけたり」は、この書にある一節ですし、かの三島由紀夫が「私のただ一冊の書」
 として推ばんした書物としても有名です。
  ただ、当時の言葉のままに近く出版されているので、かなり読みづらいのが玉に瑕
 です。
  「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり。二つ二つの場にて、早く死ぬかたに片付く
 ばかりなり。別に仔細なし。胸すわつて進むなり。圖に当らぬは犬死などといふ事は、
 上方風の打ち上りたる武道なるべし。二つ二つの場にて、圖に当るやうにわかることは、
 及ばざることなり。我人、生きる方がすきなり。多分すきの方に理が付くべし。若し圖に
 はづれて生きたらば、腰抜けなり。この境危ふきなり。圖にはづれて死にたらば、犬死
 気違いなり。恥にはならず。これが武道に丈夫なり。毎朝毎夕、改めては死に死に、
 常住死身になりて居る時は、武道に自由を得、一生越度なく、家職を仕果たすべき
 なり。」
  これだけでも読みづらいでしょ?
平成17年1月第3週(〜1月16日)
「男子の本懐」、城山三郎著
叶V潮社、¥2,400(税抜)

 @昭和4年に組閣された浜口内閣の、浜口首相&井上蔵相の伝記的小説です。
  国民に清貧を問い、金解禁断行を行い、これがために二人とも暴漢の凶弾に倒れ
 ましたが、その生き方は、某大物政治家資産管理会社にいたことのある僕からする
 と、現代の政治家すべてが見習うべきだと思われます。
  浜口首相が著書「随感録」の中で自分の気持ちを書きとめた一節が良いですね。
  「第一に余は生来極めて平凡な人間である。唯幸にして余は余自身の誠に平凡な
 人間であることをよく承知して居った。平凡な人間が平凡なことをして居ったのでは
 此の世に於て平凡以下の事しか為し得ぬこと極めて明瞭である。・・・学生生活・官吏
 生活・政治家生活の全面を通して自ら其の本分と信ずるところに向かって・・・自分
 から言ふと可笑しいかも知れぬが・・・全力を傾注した積りである。余としては殆ど
 余事を顧みるだけの心の余裕がなかったのである。
  ・・・
  余をして忌憚なく言はしめよ。其の種類にも依ることは勿論であるけれども、余り趣味
 道楽が多すぎるといふと、あたら秀才をして凡人たらしめ、凡人をして鈍物たらしむる
 場合が少なくないのである。最後に言はしめよ。現代の青年は余りに多く趣味道楽に
 耽って居るのではあるまいか。之が果たして其の人を成功に導く所以であるか、之が
 果たして民風を作興する所以であるか」
  東大法学部を出て首相にまで登りつめた人が、平凡な訳ないんですが、見ていた
 世界(基準)が違うんでしょうね。
平成17年1月第2週(〜1月9日)
「自省録」、マルクス・アウレーリウス著、神谷美恵子訳
岩波文庫、¥400(税抜?)

 @マルクス・アウレーリウス(121年〜180年)は、ローマ皇帝で後期ストア派の
 哲人・賢人です。
  「古代精神のもっとも高い倫理的産物」と称されるこの書物には、テーヌがいう
 ように「生を享けた者の中でもっとも高貴な魂」が息づいています。
  「至る時にかたく決心せよ、ローマ人として男性として、自分が現在手に引受けて
 いることを、几帳面な飾り気のない威厳をもって、愛情をもって、独立と正義をもって
 果たそうと。また他のあらゆる思念から離れて自分に休息を与えようと。その休息を
 与えるには、一つ一つの行動を一生の最後のもののごとくおこない、あらゆる
 でたらめや、理性の命ずることにたいする熱情的な嫌悪などを捨て去り、またすべて
 の偽善や、利己心や自己の分にたいする不満を捨て去ればよい。見よ、平安な敬虔
 な教えを守るものにたいして神々はそれ以上何一つ要求し給わないであろう。」
  「明けがたに起きにくいときには、つぎの思いを念頭に用意しておくがよい。『人間の
 つとめを果たすために私は起きるのだ。』自分がそのために生まれ、そのためにこの
 世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついってるのか。それとも自分という人間は
 夜具の中にもぐりこんで身を温めているために創られたのか。『だってこのほうが
 心地よいもの。』では君は心地よい思いをするために生まれたのか。小さな草木や
 小鳥や蟻や蜘蛛や蜜蜂までがおのがつとめにいそしみ、それぞれ自己の分を果たし
 て宇宙の秩序を形作っているのを見ないのか。
  しかるに君は人間のつとめをするのがいやなのか。自然にかなった君の仕事を
 果たすために馳せ参じないのか。『しかし休息もしなくてはならない。』それは私もそう
 思う、しかし自然はこのことにも限度をおいた。同様に食べたり飲んだりすることにも
 限度をおいた。ところが君はその限度を超え、適度を過ごすのだ。しかも行動に
 おいてはそうではなく、できるだけのことをしていない・・・。」
  時のローマ帝国は、今でいうアメリカ合衆国のようなものでしょうか。○ッシュもこの
 書を読んでマルクス・アウレーリウスの高い精神性を学んでもらいたいものです。
平成16年12月第5週&平成17年1月第1週(〜1月2日)
「不動産売買得本」、高橋隆明著
全日出版、¥3,500(税抜)

 @企業保有不動産を、企業分割を前提として企業ごと売買するスキームを解説して
 くれている書籍です。
  こんな薄いのに3,500円かよっ、っとつっこみたくなりましたが、そこはプチ専門書
 ってことで。
  まあ結論としては、保有期間5年以内の不動産譲渡益課税率39%、もしくは事業
 税率41%が高いので、現在軽減されている個人株主に対する非上場株式の譲渡益
 課税率20%を利用して節税しましょう、ってことですね。
  会社精算時の担保不動産売却に関する裏技とかにも利用を勧めていますが、
 銀行ってそんなにバカじゃない気もします。
平成16年12月第4週(〜12月26日)
「歎異抄」、唯円(親鸞聖人)著、金子大榮編
法蔵館、¥1,600(税抜)

 @一転、精神を洗い清める良書です。
  言わずと知れた親鸞聖人の言葉を唯円が記した書物です。親鸞聖人は浄土真宗
 の開祖ですね。
  「歎異抄」は日本思想界最高の書物と言われ、あまりに有名なんでご存知でしょう。
  「阿弥陀仏というのは真無量である。真に無限なるものである。真に無限なるものは、
 あらゆる有限を意味づけてゆき、あらゆる有限に光を与えるものなのである。したがっ
 て、阿弥陀という無限者を念ずることになれば、善人もその居る所があり、悪人もその
 居る所があり、一人残らず阿弥陀の光の内において、その存在が与えられるのである。
 だから、私はどうなってもよいのである。また、世の中はどうなっても差し支えないので
 ある。というふうなものが与えられるのが、念仏往生の道というものであるように思うの
 です。
  それでは、そのために何をしてもよいのですか。そのとおり。しかし、自暴自棄の、
 捨て鉢の我執と違う点は、どうなってもよいと知りつつ、しかも平和を願うのです。
 どうなってもよいと知りつつ、私たちは幸福を求めるのです。しかし幸福を求めても、
 それに驕らず、それに調子つかず、すべて幸福とか不幸とかを超えた立場において、
 幸福を求める。何をしても差し支えないと知りつつ、できるだけの善を求めてゆくという
 ところに、念仏者の生活がある。言葉を同じくしても、自暴自棄とは、全然異なるものが
 あるのです。それは根底にあきらめの智慧をもっているか、それとも捨て鉢の我執しか
 ないのかというところに分かれ目があるのです。」
  ちなみに、「歎異抄」原文は僕の今の知識じゃ立ち向かえません。
平成16年12月第3週(〜12月19日)
「ケンカ哲学」、糸山英太郎著
河出書房新社、¥1,600(税抜)

 @次はうって変わって資産5,390億円、日本第4位の大金持ち糸山英太郎氏の著書
 です。しかしと言うか、やはりと言うか、俗っぽい香り超!満載です。前週ヒロ・ナカジマ
 氏など真っ青です・・・。
  前週以上に書籍代と時間を損した気分になりました。
  参考になる箇所は、ほとんどありません。ご馳走様げっぷって感じです。
  「まったく売れなかった私がなぜ、突然、そんなに売りまくることができたのか。かい
  つまんでいうと、人間の心理というものがわかったうえで商売したことが大きい。
   といっても、たいそうな話ではない。列挙すると、こんなことになろうか_。
   ・あまり売り気を見せると買い叩かれる。
   ・ボロクソに言う客は逆に関心が高い。
   ・相手の腹をさぐるためにはまずふっかけてようすを見る。
   ・商談がうまい人は世間話がうまい。
   ・会社の名前や肩書きでなく自分の名前で売り込む。
   このいずれもがケンカの極意に通じていた。」
  次週は精神を洗い清めるような書物に触れよーっと。
平成16年12月第2週(〜12月12日)
「ハワイプチ富豪の成功法則」、ヒロ・ナカジマ著
アスコム、¥1,400(税抜)
 @その名の通り「プチ」富豪の体験談です。どこかに、自分は成功者だと主張しながら、
 幸福になれない人間の悲哀が感じられます。俗っぽい香り満載です。
  書籍代と時間を損した気分になりました。
  「他人と同じことをしないこと。
   それは言い換えれば、「自分の強み=鉱脈」を探すことです。
   人はそれぞれ長所を持っています。本当はその人しか持っていない長所=鉱脈が
  あるのに、それを探す努力をしないで人と同じことをしていたら、人生の醍醐味を自ら
  手放すことになります。
   〜
   それほどビジネスとお金は怖いものです。他人を信じた者が負ける。経営者は孤独
  です。それを覚悟できないのなら、ビジネスなど起こすべきではありません。」
  特に、不動産投資によるキャッシュフローを狙うよう勧めていますが、業界人以上の
 知識を持たずに不動産投資するのは、現在の日本では無謀の極みです。
  ベストセラー「金持ち父さん・・・」も同趣旨の話だそうですが、ナンセンスですね。
  ただ一点、欧米並みのアーリーリタイヤメント生活を目標としている方には、体現者が
 語っているのですから一部参考にはなるでしょう。
平成16年12月第1週(〜12月5日)
「渋沢栄一 論語の読み方」、竹内均編・解説
三笠書房、¥1,500(税抜)

 @渋沢栄一氏は言わずと知れた日本資本主義の父ですね。
  もはや渋沢氏が論語について説いた次の言葉がすべてを表していますので、その言葉
 をもって紹介に変えさせてもらいます。
  「私が実業界に身を委ねるようになったのは、国力を充実させ、国を富ませるためには、
 まず農工商、なかでも商工業を盛んにしなければならないと考えていたからである。そこ
 で資本を集めて各種の会社組織創設に尽力したのである。
  そこで、会社をうまく経営するにあたって、いちばん必要な要素は会社を切り回す人材
 である。人材が得られないならば結局その会社は必ず失敗する。そこで私は、この銀行
 や各種会社の経営を成功させるためには、実際の運営に当たる人に、事業上だけでなく
 一個人として守り行うべき規範・基準がなくてはならないと考えたのである。
  このように考えるとき、日常の心得を具体的に説いた「論語」は、その基準にうってつけ
 で、どう判断してよいか悩むときには「論語」のものさしに照らせば、絶対間違いないと
 確信しているのである」
  えっ、論語を知らない・・・?!それでも読めます(笑)。
 
これ以前は多過ぎてメンドイため(笑)省略します。
04年12月〜05年1月の本!